企業型DCの基礎#企業型DC#退職給付制度入門

企業型DCの加入者の範囲 ―「一定の資格」と代替措置、資格喪失年齢

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企業型DCを実施している会社では、「誰がDCに入るのか」を規約で決めています。正社員は入るがパートは入らない、試用期間中は入らない、65歳まで入れるといった線引きには、法律と通知で決められたルールがあります。この記事では、企業型DCの加入者の範囲について、原則と例外、外した人への「代替措置」、そして何歳まで加入者でいられるかを整理します。

この記事で分かること

  • 企業型DCの加入者は「厚生年金に入っている従業員全員」が原則であること
  • 加入者を絞るときに使える4つの「一定の資格」(職種・勤続期間・年齢・希望者)と、その条件
  • 加入しない人に用意する「代替措置」の考え方と、代替措置がいらない場合
  • パート・嘱託・無期雇用の社員の扱いで気をつける点
  • 何歳まで加入者でいられるか(資格喪失年齢)と、老齢給付金を受け取った人の再加入制限

1. 原則は「厚生年金に入っている従業員は全員」

企業型DCの加入者(掛金を積み立ててもらう人)になるのは、DCを実施している事業所で働き、厚生年金に加入している人です。法律上は「第一号等厚生年金被保険者」といいますが、要するに、会社から給与を受け取り、厚生年金保険料を納めている人のことです(私立学校の教職員も含みます)。根拠はDC法9条です。

ここで大事なのは、法律の出発点が「全員加入」だということです。会社が何も定めなければ、厚生年金に入っている人は正社員でもパートでも役員でも、全員が加入者になります。実際には多くの会社が規約で範囲を絞っていますが、それは「全員」から例外として外している、という構造です。

例外は2つだけです。ひとつは、会社が規約に「一定の資格」を定めて、その資格に当てはまらない人を外す場合。もうひとつは、企業型DCの老齢給付金を請求した人で、こちらは規約に書かなくても法律上当然に加入者になれません。

図1 企業型DCの加入者の範囲。原則は厚生年金に加入している従業員全員。例外は規約で定める一定の資格と、老齢給付金を請求した人
図1 企業型DCの加入者の範囲 ―原則と2つの例外

「全員加入が原則」ということは、厚生年金の加入範囲が広がると、DCの加入者の範囲も連動して広がるということでもあります。短時間労働者への厚生年金の適用拡大のように、厚生年金の加入要件が変わったときに規約を確認しておかないと、DCの加入手続きが漏れるおそれがあります。

なお、同じ事業所の従業員が2つの企業型DCに同時に加入することはできません。1つの事業所で複数の企業型DCを実施する場合は、それぞれの規約で加入者が重ならないように定めます。

2. 範囲を絞る4つの「一定の資格」

規約で加入者を絞るときに使える切り口は、厚生労働省の通知(法令解釈通知)で4つに限られています。「一定の職種」「一定の勤続期間」「一定の年齢」「希望する者」です。この4つ以外の切り口で外すことは、基本的に「特定の人を不当に差別する扱い」とされ、規約の承認が得られません(合理的な理由がある場合は、行政が個別に確認したうえで判断されます)。

図2 加入者の範囲を限定できる4つの一定の資格。職種、勤続期間、年齢、希望する者
図2 加入者の範囲を限定できる4つの「一定の資格」

① 一定の職種

「研究職のみ」「営業職のみ」のように、特定の職種の人だけを加入者にする方法です。ここでいう職種は、就業規則や労働協約などに定められていて、給与や退職金などの労働条件がほかの職種と別に決まっているものに限られます。社内で何となく呼んでいる区分では認められません。正社員とそれ以外(嘱託・パートなど)のように雇用区分で線を引く場合も、名称だけでは判断されず、この要件(労働条件が別に定められていることなど)を満たすかどうかで判断されます。その際は、短時間・有期雇用労働者の不合理な待遇を禁じるルール(厚生労働省の指針)の考え方を踏まえ、区分することに合理的な理由があるかも問われます。

例えば嘱託社員を外すなら、嘱託社員を定義した就業規則や嘱託社員規程を規約の申請時に提出し、労働条件が別に定められていることを確認されます。管理職を一つの職種として扱うことも、給与・退職金などの労働条件が異なる合理的な理由があれば可能とされています。役員を外す設計も多く見られますが、厚生年金に入っている以上は原則として加入者であり、外してよいかは給与規程などの違いを踏まえた個別の判断になります。

② 一定の勤続期間

「勤続3年以上の人だけ」「試用期間中の人は外す」のように、勤続期間で線を引く方法です。勤続期間は自社での実際の勤続年数で数えます。前の勤務先の期間を含めることや、「標準入社年齢から逆算して勤続とみなす」ような計算はできません(合併・分割で実態として勤続が続いている場合は、規約に書けば通算できます)。

「制度を始める時点の在籍者だけを加入者にする」「新入社員だけを加入者にする」といった設計も、この勤続期間の切り口で扱われます。ただし、外した人には次の節の代替措置が必要になるのが基本です。

③ 一定の年齢

年齢で線を引く場合は、「○歳未満の人だけを加入者にする」という形だけが認められます。「27歳以上の人だけ」のような下限を設けることはできません。また、DCは老後の所得確保のための制度なので、○歳を60歳より低くすることもできません。

例外として、制度を始めるとき、または入社したときに50歳以上の人は、加入者から外すことが認められています。運用できる期間が短く、加入期間が短いと60歳になってもすぐに受け取れないといった不都合が生じるおそれがあるためです。年齢の上限側(何歳まで加入者でいられるか)は、第5節で説明します。

④ 希望する者

加入するかどうかを従業員が選ぶ方法です。例えば「DCに加入するか、同じ額を前払い退職金として給与で受け取るか」を選ばせる設計がこれに当たります。

注意点は、一度加入した人は、本人の希望で抜けることはできないことです。前払いを選んだ人があとからDCに加入することは、規約に加入のタイミングを定めておけば可能ですが、DCから前払いに戻ることはできません。選択の場面では、この「片道」の性質を従業員にきちんと伝える必要があります。

資格 できること(例) できないこと・条件
一定の職種 研究職のみ、営業職のみ(雇用区分で分ける場合も、名称ではなく右の条件で判断) 就業規則等に定められ、給与・退職金などの労働条件が別に決まっている職種であること
一定の勤続期間 勤続○年以上のみ、試用期間中は外す、導入時の在籍者のみ 他社での勤続期間は数えない。みなし勤続は不可
一定の年齢 60歳以上の年齢で「○歳未満のみ」、導入時・入社時に50歳以上の人を外す 60歳より低い年齢での線引き、「○歳以上のみ」という下限は不可
希望する者 DCか前払い退職金かを本人が選ぶ 加入後に本人の希望で抜けることは不可

3. 外した人には「代替措置」を用意する

「一定の資格」で加入者を絞るとき、外れた人が経済的に不利にならないようにする必要があります。そのために用意するのが代替措置(DCの掛金の代わりになる措置)です。考え方はシンプルで、加入者に月1万円の掛金を拠出するなら、加入しない人にも概ね同額を別の制度で用意する、というものです。

図3 代替措置の考え方。加入しない人にも概ね同額を別の制度で用意する。認められる制度と認められないもの、代替措置がなくてもよい場合
図3 代替措置の考え方 ―加入しない人にも「同じくらい」を用意する

代替措置として使える制度は、どの資格で外したかによって決まっています。

  • 職種・勤続期間で外した場合:退職一時金制度(前払い退職金を含む)、確定給付企業年金(DB)など、既存の制度が適用されていること。例えば、DCを導入しない職種の人は従来の退職金制度に残る、という形です。
  • 年齢(50歳以上の例外)・希望者で外した場合:退職一時金制度(前払い退職金を含む)。希望者で外した場合に限り、DBも使えます。

代替措置は「老後の所得保障」の性格をもつ制度であることが求められます。人間ドック補助などの福利厚生メニューから選ぶカフェテリアプランは、代替措置として認められていません。一方で、前払い退職金は給与として課税されるため手取りはDCの掛金より少なくなりますが、税引後まで同額にそろえる必要まではないとされています。

試用期間中の人を外す場合も、原則として代替措置が必要です。このため、実務では試用期間中の人も加入者にしたうえで、勤続3年未満で退職した人の掛金を会社に戻す「事業主返還」の仕組みを規約に定める設計がよく使われます(事業主返還は別の記事で扱います)。

4. パート・嘱託・無期雇用の社員の扱い

代替措置がなくても不当な差別にはならない、とされる場合があります。嘱託やパートなど、給与規程・就業規則・雇用形態・退職金の有無が、加入者となる従業員と比べて著しく異なる人です。こうした人は、加入者から外し、代替措置も講じないことが認められる場合があります。

ただし、「嘱託」「パート」という名称だけで判断されるわけではありません。労働条件が著しく異なるかどうかは、パートタイム・有期雇用労働者の不合理な待遇を禁止する厚生労働省の指針の考え方を踏まえ、実態で個別に判断されます。

特に注意したいのが、無期雇用のパートや、有期から無期に転換した社員です。かつてはパート・アルバイトの多くが有期雇用で、雇用契約書のひな型を示せば足りることが多かったのですが、無期雇用のケースが増えた今は、労働条件をよく確認したうえで、加入から外せるかを地方厚生局に事前に相談するといった対応が必要になることがあります。

もうひとつ、代替措置を不要にできる場合として、雇用期間が事業主返還の対象となる期間(最長3年)より短いことが、雇用契約などで最初から確実な人があります。この扱いにするには、労使合意で作る規約などで対象者を明確にしておく必要があります。また、契約が更新されて、その期間(勤続3年未満なら3年)以上働く見込みになった時点で、DCの加入対象にしなければなりません。

▶ 雇用形態を見直すときは、DCの規約も確認

パートの無期転換、正社員登用、厚生年金の適用拡大など、雇用区分や社会保険の適用が変わるときは、DCの加入者の範囲に影響しないかを確認しましょう。規約の変更が必要になることもあります。相談先は、制度を委託している運営管理機関です。

5. 何歳まで加入者でいられるか ―資格喪失年齢

現在の仕組みでは、会社は規約で「○歳未満の人を加入者とする」と定めることで、加入者でいられる年齢(資格喪失年齢)を決めます。年齢は60歳以上であれば上限はありません。厚生年金の被保険者は原則として70歳未満の人なので、年齢を定めなければ、通常は70歳で厚生年金から外れたときに加入者でもなくなります。

図4 何歳まで加入者でいられるか。規約で60歳以上の年齢を定めた場合と定めない場合
図4 何歳まで加入者でいられるか ―資格喪失年齢の選択肢

資格喪失年齢の決め方には、ある程度の自由があります。

  • 定年年齢と一致させる必要はありません。例えば定年が65歳の会社で、DCの資格喪失年齢を62歳にすることもできます。
  • 労働条件が異なるなど合理的な理由があれば、同じ事業所の中で職種ごとに異なる年齢(営業職は65歳、事務職は63歳など)を定めることもできます。複数の会社で運営する規約では、事業所ごとに年齢を変えることもできます。
  • 年齢に達した日(誕生日の前日)に資格を失うのが基本ですが、規約に定めればその月の末日や年度末まで加入者とすることもできます。

▶ 「60歳で終わり」にしたいなら、規約に書く

2022年5月の改正前は、規約に何も書かなければ60歳で加入者でなくなりました。改正後は逆で、何も書かなければ60歳以降も自動的に加入者になります。60歳で加入者を終わりにする設計なら、規約に「60歳未満の人を加入者とする」と明記しておく必要があります。自社の規約がどうなっているか、一度確認しておきましょう。

なお、加入者でいられる年齢の上限は、制度創設以来段階的に引き上げられてきました。2001年の制度創設時は60歳まで、2014年1月からは規約に定めれば65歳まで(ただし60歳前から同じ事業所で働き続ける人に限る)、そして2022年5月からは、厚生年金に加入している間はずっと加入者でいられるようになりました。同じ事業所で働き続けるという条件もなくなり、60歳以降に中途入社した人も加入できます(ただし、企業型DCの老齢給付金を請求したことがある人は除かれます。第6節)。

図5 資格喪失年齢の引き上げの歴史。2001年は60歳まで、2014年1月から規約で65歳まで、2022年5月から厚生年金に入っている間
図5 資格喪失年齢の引き上げの歴史

60歳以降も加入者でいられる期間が延びると、その分だけ掛金を積み立てられる期間が延び、老後の資産を増やせます。一方で会社の掛金負担も続くため、継続雇用の制度や人件費とあわせて検討することになります。なお、規約を変えて資格喪失年齢を引き上げた場合、すでに年齢到達で加入者でなくなっていた人も、要件を満たせば再び加入者になります。

6. 老齢給付金を請求した人は再加入できない

60歳以上の人も加入者になれるようになったことにあわせて、企業型DCの老齢給付金を請求した人は、企業型DCの加入者になれないというルールが設けられました(根拠はDC法9条2項)。老齢給付金を受け取っている途中の人も、受け取り終えた人も対象です。前の会社の企業型DCで受け取った人も含まれます。

図6 老齢給付金を受け取った人の再加入の判定。請求して受け取っている人は加入できない。請求していない人、iDeCoの老齢給付金を受け取った人は加入できる
図6 老齢給付金を受け取った人の再加入 ―判定の流れ

ポイントは「請求したかどうか」で判断することです。受け取る条件を満たしていても、まだ請求していない人は加入できます。また、iDeCo(個人型DC)の老齢給付金を受け取った人は、企業型DCに加入できます。

会社は、60歳以上の人を新たに加入者にするとき、このルールを本人に説明し、該当するかどうかを本人から申告してもらって把握します。あわせて、前の会社の企業型DCに残高がある人は、今の会社で加入者でいる間は老齢給付金を請求できず、その残高を今の会社の企業型DCに移す必要があることも伝えます。もし加入後に該当者だったと分かった場合は、さかのぼって加入を取り消し、納めた掛金を返すことになります。

7. 担当部署で確認しておきたいこと

加入者の範囲は、規約の承認を受けたときに決まり、その後は日々の入退社の事務の中で当てはめていくものです。次の点を押さえておくと、加入漏れや誤った除外を防げます。

  • 自社の規約の「加入者の資格」の条文を読む:どの切り口(職種・勤続期間・年齢・希望者)で誰を外しているか、資格喪失年齢は何歳か。
  • 外している人への代替措置を確認する:退職金規程や前払い退職金の規程に、DCに加入しない人への措置がきちんと書かれているか。
  • 雇用区分や社会保険の適用が変わるときに規約を見直す:無期転換、新しい雇用区分の創設、厚生年金の適用拡大などは、加入者の範囲に直結します。
  • 60歳以上の入社者には老齢給付金の請求の有無を確認する:本人への説明と申告の受け付けを入社手続きに組み込んでおきます。
  • 迷ったら運営管理機関に相談する:規約の変更が必要か、承認が必要かは、制度を委託している運営管理機関が相談先です。

なお、資格を取得する日・失う日の考え方や、入社・退社のときの届出の流れは、別の記事で扱います。

まとめ

  • 企業型DCの加入者は、厚生年金に加入している従業員全員が原則。厚生年金の適用が広がれば、DCの加入者の範囲も広がる。
  • 範囲を絞れるのは、原則として「一定の職種」「一定の勤続期間」「一定の年齢」「希望する者」の4つの切り口。年齢は「60歳以上の○歳未満」が基本で、導入時・入社時に50歳以上の人は外せる。
  • 外した人には、退職一時金や前払い退職金などで概ね同額の代替措置を用意するのが基本。カフェテリアプランは代わりにならない。
  • 労働条件が著しく異なる嘱託・パートなどは代替措置なしで外せる場合があるが、名称ではなく実態で判断される。無期雇用の社員は特に確認が必要。
  • 2022年5月から、厚生年金に入っている間は加入者でいられる。60歳で終えるなら規約に明記する必要がある。
  • 企業型DCの老齢給付金を請求した人は再加入できない。60歳以上の入社者には説明し、本人から申告を受ける。

出典・参考

  • 確定拠出年金法(e-Gov法令検索)― 第9条(企業型年金加入者)、第11条(資格喪失の時期)
  • 確定拠出年金法施行令(e-Gov法令検索)― 第6条(同じ事業所で複数の規約の加入者とならないこと)
  • 確定拠出年金法施行規則(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省「確定拠出年金制度について」(法令解釈通知)第1-1「一定の資格」の内容、「確定拠出年金の企業型年金に係る規約の承認基準等について」別紙、「確定拠出年金Q&A」(加入資格・代替措置・加入要件に関する各問)― 厚生労働省「確定拠出年金制度」
  • DC Insider「確定拠出年金 法令・通知」

本記事は制度の概要を分かりやすく説明することを目的としており、個別の制度の取扱いは各社の規約・規程や、運営管理機関・専門家にご確認ください。

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